FXでは、所得に対して税金を計算する「確定申告」が必要です。
そのため、FX取引を開始する前にFXの対象になる所得を把握する必要があります。
なぜなら、確定申告をしない場合は、国税庁から脱税と判断されるからです。
脱税と判断された場合は、罰則を受ける可能性もあるため注意しましょう。
▼Contents
確定申告とは1年間の所得を税務署に報告する手続き
最初に、確定申告とはどのような手続きなのか解説します。
結論からいうと、確定申告は1年間の所得を税務署に報告する手続きです。
そのため、FXはどのような所得で申告しなければいけないのか、把握する必要があります。
なぜなら確定申告は、所得の種類によって計算方法や税率が異なるためです。
FXを始める前に、どのような種類の所得か把握しておきましょう。
FXの所得税は10種類ある中の雑所得に分類される
FXの所得は「雑所得」として申告が必要です。
雑所得とは?
日本の税制上、事業所得や給与所得など、他の所得に分類されない所得のことです。
日本の所得は、10種類の所得に分類されています。
税制上分類されている所得は、以下の通りです。
給与所得 | 給料や賃金、賞与などが対象となる所得 |
不動産所得 | 土地や建物の貸付などが対象となる所得 |
事業所得 | 漁業や農業などの自営業などが対象となる所得 |
退職所得 | 退職金や一時恩給などが対象となる所得 |
一時所得 | 生命保険の一時金や賞金などが対象となる所得 |
譲渡所得 | 土地や株式などを譲渡したときに対象となる所得 |
山林所得 | 所有期間5年以上の山林などを伐採して譲渡したときに対象となる所得 |
配当所得 | 上場株式や投資信託の分配で申告分離課税を選択した所得 |
利子所得 | 預貯金の利子などが対象となる所得 |
雑所得 | 投資など、他の所得に分類されない所得 |
加えて、FXの所得は「申告分離課税制度」が適用されています。
そのため、別の所得と合算せずに申告しなければいけません。
申告分離課税制度とは?
申告分離課税制度は、他の所得は合算せずに税金を納める制度です。
たとえば、会社に勤めながらFX取引をおこなっていた場合は、給与所得と雑所得の2つを申告する必要があります。
所得は、収入や職業によって税率が異なるため注意しましょう。
FXで確定申告をするために必要な事前知識
まずは、FXで確定申告をおこなうために必要な事前知識を解説します。
FXでは、国同士の通貨を交換して利益を得る取引です。
しかし、FXはどのような取引が確定申告になるのでしょうか。
確定申告対象になるのは、以下の2つです。
- 為替差益
- スワップポイント
FXは「為替差益」と「スワップポイント」が確定申告の対象
FX取引では、利益を得られる方法が2つあります。
利益を得られる方法は「為替差益」と「スワップポイント」です。
上記2つの取引方法は、損益が出る取引のため「為替差益」と「スワップポイント」が確定申告の対象になります。
為替差益とは?
為替差益は、FX取引で主に利用されている取引です。
価値の安い通貨を買って、価値が高くなったときに売ると、上がった分の利益を獲得できます。
加えて、価値の高い通貨を買って、価値が安くなって売ると、下がった分の利益も獲得可能です。
スワップポイントとは?
スワップポイントとは、2カ国間の金利差で発生する利益です。
たとえば、金利の低い通貨を売って、金利の高い通貨を買うと金利差額の受け取りが可能です。
FXについて知りたい方は、以下の記事で「FX」について解説しています。
FX取引をおこなうときは、基礎知識を身につけてから取引をおこないましょう。

確定申告に必要な書類は申告する所得で異なる
所得の申告は、申告する所得によって必要な書類が異なります。
たとえば、事業所得のみを申告する人と、給与所得に加えてFX取引で収益を得ている方は別の申告書類が必要です。
そのため、FX取引を開始する前に必要な書類と書き方を把握しておきましょう。
以下では、会社に勤めていてFX取引をおこなっている方の「雑所得」に必要な書類を解説していきます。
「雑所得」の確定申告書を税務署へ提出するために必要な書類2つ
「雑所得」の確定申告は、税務署へ提出するために必要な書類が2つあります。
提出するために必要な書類は、以下の2つです。
【提出する際に必要な書類】
- 年間取引報告書
- 給与所得の源泉徴収票
以下では、必要な書類について解説していきます。
「年間取引報告書」はFX証券会社からダウンロード可能
「年間取引報告書」は、取引をおこなっているFX証券会社からダウンロード可能です。
年間取引報告書とは?
年間取引報告書は、1月1日から12月31日までの取引損益や取引手数料等の合計が記載されています。
「年間取引報告書」は、FX証券会社で取引をおこなった証明が可能な書類です。
確定申告をおこなうときは「年間取引報告書」の準備も忘れないようにしておきましょう。
会社員の方は給与所得の「源泉徴収票」が必要
会社員でFX取引をされている方は、雑所得を申告するために「源泉徴収票」が必要です。
源泉徴収票とは?
源泉徴収票は、会社から1年間支払われた給与の金額と、自身が支払いした所得税の金額が記載された書類です。
源泉徴収票は、勤めている会社から年末調整後に配られます。
「源泉徴収票」は、給与所得を証明できる1つの書類です。
加えて、税務署へ提出しなければいけません。
会社から配られたときは、大切に保管しておきましょう。
会社員が「雑所得」を確定申告するために必要な書類4つ
会社員の方は「雑所得」の確定申告をするために、以下4つの書類が必要です。
【確定申告に必要な書類】
- 申告書B(第一表、第二表)
- 先物取引に係る雑所得等の金額計算書
- 申告書第三表(分離課税用)
- 所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
確定申告をおこなうときは、必要な書類を確認してから準備しましょう。
以下では、申告書の記入方法を解説していきます。
申告書B(第一表、第二表)の記入には現前徴収票が必要
申告書B(第一表、第二表)は、源泉徴収票を見ながら記入します。
そのため「収入金額」「所得金額」「所得から差し引かれる金額」は、FXに関わるのある数字は記入しません。
申告書B(第一表、第二表)の書き方は、以下の通りです。
![]()
引用元:国税庁
申告書B(第一表、第二表)は、左側の「収入金額等」「所得金額等」「所得から差し引かれる金額」を順番に記入します。
右側の「税金の計算」は「先物取引係る雑所得等の金額計算書の書き方」を準備してから記入をおこないます。
申告書B(第一表、第二表)の記入方法は、以下の通りです。
収入金額等 | 源泉徴収票に記載されている収入を記入 |
所得金額等 | 収入に対してかかる所得金額を記入 |
所得から差し引かれる金額 | 収入から所得を引いた金額を記入 |
先物取引に係る雑所得等の金額計算書の書き方
「雑所得」を申告するときは「先物取引に係る雑所得等の金額計算書」が必要になります。
「先物取引に係る雑所得等の金額計算書」の書き方は、以下の通りです。
![]()
引用元:国税庁
「先物取引に係る雑所得等の金額計算書」を記入するときの手順は、以下の通りです。
丸を記入 | |
「種類」に「外国為替取引」を記入 | |
「年間取引報告書」に記載されているFXで得た収入を記入
FXの利益が100万円の場合は「1,000,000」と記入 |
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FXに関係のある経費を記入
セミナー代2万円、パソコン代10万円の場合は、合計「120,000」が必要経費となります。 |
FXでは、FXの知識をつけるために受けたセミナー代や機材代など必要経費として申告可能です。
ただ、必要経費を申告するには領収証が必要になります。
そのため、領収証の発行をしていただきましょう。
「申告書第三表(分離課税用)」の記入と計算方法
![]()
引用元:国税庁
「雑所得」の申告には「申告書第三表(分離課税用)」が必要になります。
「申告書第三表(分離課税用)」の記入方法は、以下の通りです。
「先物取引」へ先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書の「総収入金額を記入 | |
「先物取引」に先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書の「所得金額」を記入 | |
申告書B第一表(9)と申告書B第一表(25)の合計を記入
加えて、(70)に(9)から(25)を引いた金額を記入 課税される所得金額の(67)対応分(75)へ「先物取引」の金額を記入 |
|
【(70)対応分(78)の記入方法】
給与所得-所得控除=所得金額 |
雑所得に対する税率は、一律で20.315%です。
税率の内訳は、以下の通りです。
- 所得税15%
- 住民税5%
- 復興特別所得税0.315%
ただ、雑所得を計算するときは、一気にすべての税率をかけて計算をおこないません。
そのため、復興特別所得税は各地方自治体が計算をおこないます。
復興特別所得税は、計算に入れずに計算をおこないましょう。
「収入金額」欄の記入方法
「収入金額」の記入は「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」が必要です。
記入する欄は「分離課税」の「先物取引」へ「総収入金額計」を記入します。
たとえば、FXで得た利益が100万円だった場合は「1,000,000」と記入しましょう。
「所得金額」の記入方法
「所得金額」の記入は「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」が必要です。
記入する欄は「分離課税」の「先物取引」へ「所得金額」を記入します。
たとえば「収入金額100万円」「必要経費等12万円」の場合は「所得金額88万円」です。
「所得金額88万円」の場合は「880,000」と記入しましょう。
「税金の計算」の記入方法
「税金の計算」では、申告書B(第一表、第二票)が必要です。
「総合課税の合計金額」には、申告書B(第一表、第二表)に記載している所得金額を記入しましょう。
たとえば、所得金額が180万円だった場合は「1,800,000」と記入します。
加えて「所得から差し引かれる金額」がある場合も記入が必要です。
「所得から差し引かれる金額」が70万円の場合は「700,000」と記入しましょう。
そして「(12))対応分(75)」には、(12)から(29)を引いた金額を記入が必要です。
「課税される所得金額」には「先物取引」の金額をそのまま記入します。
例として、FX取引で得た利益は100万円のため「1,000,000」と記入しましょう。
「税額を計算」する方法
最後に、税額の計算をおこないます。
まずは、給与所得に対しての税額の計算が必要です。
そのため、(83)「(70)対応分」には(75)「(12)対応分」から0.05を掛けた金額を記入します。
たとえば、(75)「(12)対応分」は110万円のため「1,100,000×0.05=55,000」です。
そして、(88)「(80)対応分」には、FXの課税所得に対する税額の計算をおこなった数字を記入します。
ただ、FXの課税所得に対する税額を計算をおこなうときは、注意点があります。
FX課税所得を計算するときの注意点。
FXの課税所得に対する税率は、一律で20.315%です。
しかし、一気に20.315%をかけて税額を出しません。
FXの課税所得20.315%の内訳は「所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%」です。
FXの課税所得の税額を計算するときは、所得税の15%から計算をおこないます。
そのため、FXで得た収入に対して所得税の15%をかけて税額を計算します。
FXで得た収入は、100万円のため「100,000×15%=150,000」です。
合計の税額は「55,000+150,000=205,000」となります。
FXで確定申告をするための注意点4つ
FXで確定申告をおこなうときは、注意点が4つあります。
FXでは、条件によって税金対象にならない場合や、税率の違いがあるためです。
確定申告を行う場合は、自身の状況から確定申告が必要か調べてから申告をおこないましょう。
国内FX証券会社と海外FX証券会社では税率の違いがある
FXでは、国内証券会社と海外証券会社が存在します。
そのため、国内証券会社と海外証券会社では、税率が異なるのです。
FX取引をおこなうときは、税率の違いを事前に覚えておきましょう。
国内証券会社と海外証券会社の税率の違いは、以下の通りです。
国内証券会社 | 一律20.315% |
海外証券会社 | 海外証券会社は所得額によって7段階の累進課税です。 |
195万円以下 | 所得税:5% 住民税:10% |
195万円以上330万円以下 | 所得税:10% 住民税:10% |
330万円以上695万円以下 | 所得税:20% 住民税:10% |
695万円以上900万円以上 | 所得税:23% 住民税:10% |
900万円以上1,800万円以下 | 所得税:33% 住民税:10% |
1,800万円以上4,000万円以下 | 所得税:40% 住民税:10% |
4,000万円以上 | 所得税:45% 住民税:10% |
FXで取引終了していない取引は申告対象にならない
FXでは、取引が継続している状態は申告対象になりません。
なぜなら、取引終了しないと確定の損益がわからないからです。
FX取引では、取引終了していない状態を「含み損」「含み益」といいます。
「含み損」「含み益」について知らない方は、以下の記事で解説しています。
取引していない状態とは、どのような意味なのか把握しておきましょう。

3年間以内の損失を帳消しにできる「損失の繰越控除」が可能
FX取引では、過去3年以内に損失があった場合「損失の繰越控除」が可能です。
FXの証券会社では「年間取引報告書」をダウンロードできます。
そのため、FX取引の結果がマイナスだった場合でも「年間取引報告書」のダウンロードをおこないましょう。
損失があった場合は、損失の証明が可能であれば「損失の繰越控除」が可能です。
まとめ
今回は、FXの確定申告について解説しました。
今回の記事をまとめると、以下になります。
- 確定申告は1年間の所得を税務署に報告する手続き
- FXの確定申告は「為替差益」と「スワップポイント」が対象
- 確定申告に必要な書類は申告する所得で異なる
- FXの確定申告をするときは4つの注意点がある
FX取引をおこなうときは、FXで得た収入に対しての税額の支払いが必要です。
加えて、給与所得や事業所得などを得ている場合は、収入を証明する書類が異なります。
FXを開始する前は、税金がかかってくるため事前に把握しておきましょう。