FX(外国為替証拠金取引)は、為替の動きを見てトレードを行います。
為替相場はその国の経済状況で変速的な動きをすることもあり、日本で災害が起きた際も例外ではありません。
「日本で災害が起きたときは為替はどのように動くのか?」と疑問を持っているFXトレーダーもいるでしょう。
実際、日本で地震が発生すると円高傾向になりやすいです。ではなぜ、地震が発生すると円高傾向になるのでしょうか?
今回の記事は日本で起きた地震で、円高になる根本の理由を解説します。
▼Contents
1995年に起きた阪神淡路大震災
1995年1月17日に兵庫県淡路島北部が震源で、阪神淡路大震災が発生しました。
マグニチュード7.3の大きな地震で、震源地に近い神戸市近辺の被害は甚大でした。
さらに道路・鉄道・電気・水道などの生活インフラが遮断され、広範囲で機能しなくなったのです。
犠牲者は合計6,434人・負傷者は合計43,792人と多大な被害が起きた大震災でした。
ドル円相場が一時的に79.75円まで下がった
阪神淡路大震災後のドル円相場は、一時的に79.75円まで下がることとなりました。つまり、円高トレンドとなったのです。
当時のドル相場は、90円台後半から100円前後の水準でした。
地震発生後、円高トレンドとなり3月ごろから4月ごろにかけて79円台まで加速したのです。
これは当時の為替相場において、ドル円相場の最安値と言われていました。
しかし阪神淡路大震災後の円高は、発生後時間をかけることなく回復しました。
2011年に起きた東日本大震災
2011年3月11日に宮城県牡鹿半島の東南東沖130キロメートルが震源で、東日本大震災が発生しました。
東日本大震災は発生時点において、日本周辺における観測史上最大の地震でした。
また最大遡上高40.1mにも上る巨大な津波が発生したことにより、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害が発生したのです。
地震における犠牲者は15,899人・負傷者は6,157人・行方不明者は2,526人と発表されています。
震災による直接的な被害額は、16兆円から25兆円と試算している大震災でした。
ドル円相場は最安値を更新した
東日本大震災が起こったことにより、ドル円相場は76.48円という最安値をつけました。
東日本大震災でもドル円相場は円高となり、3月11日に82円台だったドル円相場が17日には76円台となったのです。
阪神淡路大震災に起こった値を更新し、史上最高値となりました。
その後、過度な円高を是正するためにG7による協調介入が起こり、結果的に過度な円高局面は脱することができました。
このように日本における大震災が起こるとドル円相場は円高となりますが、なぜ円高になるのでしょうか?
日本の大震災で円高になる2つの理由
- リパトリエーションの動きが円高を生む
- 円キャリートレードの巻き返しによって円高になる
阪神淡路大震災・東日本大震災が起こった際、どちらの大震災でもドル円相場は円高となりました。
円高になる理由として1つは、円キャリートレードの巻き返しによるものがあります。
もう1つの理由としてリパトリエーションの動きによるものがありますが、具体的にどのような理由なのか次の項目で解説します。
リパトリエーションの動きが円高を生む
震災時に円高になる理由として、リパトリエーションの動きが考えられます。
リパトリエーションとは日本語に訳すと「本国送還」という意味を持ちます。マーケット用語による意味も同様で、企業・金融機関・投資家・保険会社などが海外で保有している株や債券を売り、日本円へ換算することを意味します。
このリパトリエーションが必要になる理由が、大震災や災害における保険料の支払いがある場合です。
保険会社に掛けている保険金は、保険会社によって日本の株・債券、海外通貨などに投資されています。
つまり大震災が起こると日本の企業や保険会社は、復興や保険などの支払いに多くのお金を必要とするため、海外で投資している資産を日本円に換金しようとする動きが見られます。
そのため災害が起きた際はリパトリエーションが起こり、円高が進むと考えられています。
しかしリパトリエーションだけの理由で、史上最高値まで円高になる理由にはなりません。震災時に円高になる理由はもう1つあります。
円キャリートレードの巻き返しによって円高になる
前の項目でリパトリエーションが円高になる第一の理由と説明しましたが、実際には東日本大震災のような大きな災害が発生したにも関わらず海外資産の売却による円買いの動きはほとんどありませんでした。
実際は日本の株買いの動きが非常に関係しており、東日本大震災のような災害時に海外投資家が取る行動が円高に動く理由になっています。
この海外投資家が取る行動を円キャリートレードの巻き返し(巻き戻し)と言い、大災害などが起こったら流動性を確保するために運用していたお金を円に戻すことで円買いの状況が進みます。
円キャリートレードとは、海外投資家が低金利である円を借り入れして金利の高い通貨に転換し、国の株式や債券などに投資・運用することを指します。運用することで発生する金利差を獲得することが、円キャリートレードの目的となります。
日本で大震災が発生すると、海外投資家は防衛本能から自身の持っている株を売りたい状況になります。
しかし、高いレバレッジを掛けて取引している海外投資家が持株を売らずにマーケットに耐えようとするため、次は耐えるための証拠金である日本円が必要となってくるのです。
この自身の持株を守るための日本円の証拠金が、株が下げれば下がるほど必要となるため海外投資家は更に円買いを起こすようになります。
海外投資家がリスク回避で円買いを行う結果、瞬間的に円高になる現象が起こるのです。
まとめ
- 阪神淡路大震災ではドル円が79.75円まで下がった
- 東日本大震災ではドル円相場が最安値を更新した
- リパトリエーションの動きから円高になる
- 円キャリートレードの巻き返しにより円高が更に進む
最後に地震発生後に円高になる理由についてまとめます。
1995年に発生した阪神淡路大震災では、当時最安値であるドル円79.75円まで下がることとなりました。
2011年に発生した東日本大震災では阪神淡路大震災の79.75円を更に更新し、最安値である76.48円まで下がりました。
円高になる理由として災害による被害の復興・保険などの支払いに当てるためのお金を、海外資産から日本円に換金するリパトリエーションの動きがあります。
更に円高になるもう1つの理由が円キャリートレードによる巻き返しがあり、これは海外投資家が持株を守るために日本円の証拠金を必要とするため円買いを起こすのです。
この2つの理由により、日本での地震発生後は円高になると考えられています。
今後のFX取引において大きな災害が起こる場合はすでにマーケットは学習しているため、円買いで反応することは意識しておくと良いでしょう。